麦ふみクーツェ

2006年10月21日 読書
音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きなからだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで目覚めたぼくは、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。麦ふみクーツェの、足音だった。―音楽家をめざす少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみのなか鳴り響く、圧倒的祝福の音楽。

挫折すること数回、なのに今回はすんなりと読めました。そういえば「デンデケデケデケ」に続いて音楽モノじゃありませんか。

いいです、いしいしんじ。かつてブラバンに所属していた私としては、音楽の持つあの一体感に共感してしまいます。

それはさておき、主人公の「ぼく」の父と祖父の二人がいいです。二人がとりつかれてしまった数学や音楽、一つのモノに没頭する姿は時に滑稽なほどでどこか悲しい感じすらします。父と祖父が今の町にやってきた理由についてのエピソードが切なすぎ・・・。

そして、作中の随所にでてくる新聞記事のスクラップの事件が本編といつの間にか重なる瞬間があり、「おお、大したもんだ!」と感心しました。

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