写楽

2007年4月12日 読書
江戸の町に忽然と現れた謎の浮世絵師・写楽。天才絵師・歌磨の最大のライバルといわれ、名作を次々世に送り出すと、たった十ヵ月で消えてしまった“写楽”とは、いったい何者だったのか。ひたむきに夢を追う若き芸術家たちの生き様を描き切った、著者渾身の書下ろし。

そういえば、小学生の頃写楽の映画がやってたっけなぁ・・・と思ったらこの作品がその原作。

後の世では浅草のお土産屋さんで外国人向けのTシャツの柄にされるほどの人気になっているというのに、当時の江戸庶民にはとことん拒絶された写楽。芸術の評価なんてどう転ぶかわからないものですね・・・。

この作品のテーマは「自分にしか描けない自分の絵」だと思います。人々に受け入れられた者もいれば拒絶された者もいる。つまり前者は歌麿で後者は写楽なわけですが。
「おれァ、絵師じゃねぇもの。他人の気に入るようにァ描けねぇの。」というところに絵描きの業を感じました。

『写楽』というタイトルとは裏腹に作品の中では写楽や歌麿のプロデュースした地本問屋・蔦屋重三郎を中心にストーリーが展開していった感があります。
蔦重と彼を取り巻く浮世絵師達との人間群像劇という印象を持ちました。

最後に一つ勉強になったことがありました。浮世絵の細やかな線や、色彩の妙は絵師の技量もさることながら、彫りや刷りの職人達の腕によるところが多いそうです。まさしく縁の下の力持ち。すごいぞプロフェッショナル。

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